月曜日の憂鬱(SS)。

月曜日の憂鬱(SS)。
また、月曜日。
軍部は勿論規則性のある土日休みでは無いが、世間のミナサマは大概週末が休みなのである。
よって月曜日とは仕事が始まる曜日なのだ。・・・世間的には。
何となく「また始まるか」などと思ってしまうのは私だけではないだろう。
昨日は日曜日で午後は帰宅出来たのだから常よりは充分休息を取っていたとしても。

逃げてしまおうか。

なんて事を考えてしまう。

しかし、悲しいかな、そんな事を考えながらも足は慣れた道を無意識に歩き、いつもの執務室に到着しているのだ。
既に山積みになっている未決箱を眺め。
眺めた所で減りはしない事を知っていても、まだ朝だし手を着ける気力が湧かないんだ、などとどうしようもない言い訳をして、山を突付く。
あぁ、コーヒーを淹れてからじゃないと、とか、そう言えばクリップが切れていたな、などと急がない事を今やらなければいけない事のように振る舞って。
結局無為に時刻を消費して、こうして帰りがまた遅くなるのだ、と、ほんの少し後悔して。
観念して椅子に座る。
「やるか・・・」
決心して山に手を伸ばそうとした所で、急に鳴り響く電話。
中尉だろうか、と執務室には誰も居ないのにギクリとなる。
誰も居ないのに、誰も見ていないのに、サボリのタイミングを見計らって来るのは天才的な副官なのだ。
しかし取らない訳にもいかないので、幾許かの気合いを入れて受話器を上げた。
「・・・マスタングだが」
『あ、大佐?』
「鋼の?」
相手の声は予想もしなかったもので。
「・・・朝からどうした?」
『いや、今駅なんだけど午後そっち行くからさ。欲しいサインがあるんだけど、居る?』
朝から元気な子供は弾むようなリズムでそんな事を告げてきた。
「あ、あぁ」
『よっしゃ!じゃまた後で!』
「待ちたまえ。君、今回は長くこちらに居るのかね?」
用は終わりとばかりに電話を切りそうな子供にストップをかける。
『え?あぁ、サイン持ってイーストシティの蔵書家に会うから週末までは少なくとも居るぜ?って列車!出ちゃうから切るぞ!じゃ!』
言うだけ言って慌ただしく電話は切れた。

「全く落ち着きのない・・・」
ゆっくりと受話器を下ろしながら上がる気分。
「午後からあの子が来るなら片付けなければな」

逃げなくて良かった。
先程までにらめっこの勝負しかしていなかった山に、時間との勝負を挑む事にした。

君が来ると聞いただけで、今日が楽しくなる。
週末まで居ると聞いただけで今週1日1日が楽しくなる。

我ながら現金だなと苦笑しながら、本日の一番目の勝負に挑んだ。



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昨夜引きこもると言ったそばから、(私の)イヤイヤ月曜日な突発的SSでした(笑)。
予想通り・・・?

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