おそれるもの。(SS)

おそれるもの。(SS)
「君が怖れる師匠はそんなに怖いのかね?」

唐突に男が言った。

「そりゃ怖いなんてもんじゃねーー」
たまたま暇つぶしに手にしていた本が、修行時代にも読んだ本だった為、リアルに当時を思い出しブルリと震えた。
「怖いモノ知らずそうな君が、ねぇ。あぁでもアルフォンスも震えていたな」
男が思い出すかのように顎に手をやると、湿った黒髪が塊で揺れた。
「アンタの師匠は怖くなかったのかよ?」
彼の修行時代の話などは聞いた事がない。
俄かに興味を引かれて、もしかしたらタブーなのかな?と思いながらも伺ってみる。
「・・・そうだな・・・。静かな方だったかな。勤勉家で。」
「へぇ」
「もう1人は・・・そうだな、別の意味で怖いかな」
苦笑する男。
「へ?2人居んの?」
「まぁ、ね」
今度は曖昧に笑って言う様に、あ、これ以上は聞けないな、と思った。
「さておき君を貰い受けに行く時は相当の覚悟をしなくてはならない、と言う事だな」
バサリ、と布団を跳ね上げてベッドに乗り上がって来る。
「はぁ?!何言ってんだ?!」
「そのままの意味だよ」
ニコリと笑ってひょい、と本を取り上げられた。
「あ、」
視線で本の軌跡を追うと視界はパジャマの胸元へ。
腰を抱き寄せられた。
「ちょ、」
「君の師匠も怖そうだけど」
身じろぐと旋毛にキスを落とされる。
「貰い受けに行く前に、君の気持ちがよそへ行ってしまうのが一番怖いかな」
こめかみにキス。
「・・・何だよそれ・・・」
「まぁ自信はあるけどね」
「オレの気持ちが動かないって?自意識過剰だな」
笑う男に恥ずかしくて悪態をつく。
「いや。この世で一番君を好きな気持ちに、だよ」
「っ」
頬に口づけられる。
「私は君を離さない自信があるから。だから一番君の気持ちが怖いかな」
コツリと額を合わせられた。
それに上目遣いで黒目を見やって。
「・・・アンタ弱気なんだか強気なんだか分かんねぇな」
「君に関しては弱くも強くもあるさ」
柔らかに笑まれる。
「・・・じゃ、強いトコ見せてよ」
怖がる必要ないから、ときゅうと首に腕を巻き付けた。

「存分に」

男は幸せそうに笑んで、ゆっくりと唇を近付けてくるのに目を閉じた。


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抜け殻からのリハビリSS〜。
アニハガの師匠思い出してふいに思い付いた作。
何か1日会社行っただけで眠い・・・。←あんだけ寝ておいて。

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