ホワイトデーSS

ホワイトデーSS
脱稿したので、調子に乗って(あ。)、ギリギリですがホワイトデーSSを。
警視正ロイ、高校生エドの「キミの瞳をタイホする!」シリーズ(シリーズ?)で先月期間限定で掲載したバレンタインSSのホワイトデーバージョンです。

別途軍豆仕様でホワイトデー用イラストはあったんですが、色塗りのガッツがありませんでした・・・○| ̄|_
忘れた頃に塗るかも・・・。



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「やぁエドワード君」
「・・・」

日曜日の夕方。
ピンポーンと鳴ったドアチャイム。
アルフォンスが居らず、夕食の準備をしていたが為に反応が遅れ、モニターも確認せずに慌てて出てしまったのがマズかった。
ドアの向こうにはやたら爽やかな笑顔を浮かべた男、ロイ・マスタング。
戸締まり・来客があったら相手を良く確認しなさい、と亡き母に言われていたのに(因みにアルフォンスには、兄さんは落ち着きを持て、親父には、父さんエドワードに何かあったら泣いちゃう)、と言われていたのに守れなかった。ゴメンよ、母さん。

「・・・・・・何か用?」
一応相手は警察のエリートで、知り合いでもあるので、不審者ではない。
ので、仕方なしに問うてみる。
「何か用?とは酷いなぁ、エドワード君。恋人なのに」
クッと悲壮な顔をされるのに
「いや、恋人になった覚えないし。じゃ」
こちらも半眼で見やってドアを閉めようとするが、サッと足で止められた。
悪徳セールスマンかっての。
「何なんだよ!」
「仕事帰りに恋人の顔を見に来る位良いじゃないか」
日曜も仕事なのはご苦労なこったが、相変わらず人の話を聞かない男なので好き勝手な回答である。
「断じて恋人じゃないけど、顔は見ただろ。じゃ」
用は終わったろ、と再びドアを閉めようとしたが、今度は素早い動きで玄関内に体を滑り込ませてきた。
キャリア組の癖して何で速いんだ。
「・・・あのー、不法侵入じゃねぇの?警察官さん」
「そう!今日はアルフォンス君が居ないだろう?だからこうやって不法侵入者が来ないか、恋人の護衛をしに来たのだよ」
「なんでそんな事知ってんだよ」
確かにアルフォンスは居ない。
アルフォンスはバレンタインデーのお返しに、ウィンリィを超絶人気のテーマパークに誘っているのだ。
因みにオレはバイトから帰ったばかりだ。
「そんな事。大好きな君の大好きな弟の事位、リサーチ済みだよ」
男はフフンと勝ち誇ったように笑う。
「今日アルフォンス君は某ネズミの夢の国カップル限定チケットでホワイトデーデートを敢行中の筈だ」
・・・チクショウ、どれもこれも正解だ。
「だから何でそんな事知ってんだよ!」
「君が好きだからだ」
当たり前のように胸を張って言われる。
何故それをどうやって知ったのか、を聞いているのに、やっぱり話を聞かない男なので会話にならない。
「まさか盗聴・・・」
「まさか。警察において情報は戦力なのだよ」
男はハハハと笑うが、はっきり言って国家公務員に一庶民のエルリック家の情報を掴む必要は全くないだろうが。
「言っておくけど、アンタにホワイトデーは何もねぇぞ」
先月、バレンタインだと言って、大量のバラとチョコレートを持って来た男に言う。
「・・・・・・・そ、そうか・・・。いや、別に期待していたとか、もしかしたらコッソリ用意していたけど照れ屋な君の事だから渡すタイミングが無かったかもしれないそれならこちらから顔を出そう、とか思っていた訳ではないからな。まさかそんな、」
「・・・」
明らかに分かり易い理由と落胆の表情を滲ませる男に、やっぱりな、と思う。
ドアを開けた時は、明らかにニコニコニコニコしてたし、前からホワイトデーのバイトは何時に終わるんだ、と聞いて来てたし。
はぁ、と大きく溜め息を付く。
「・・・花はこないだも言ったけど、母さんの写真の前に飾らせて貰った後、ドライフラワーにしたから。・・・サンキュな」
そこは戴きものをしたので小さく礼を言う。
「いや」
すると男は先ほどの挙動不審そうな表情から一転して、柔らかい笑みを浮かべてきた。
「受け取ってくれて嬉しいよ。・・・?」
笑って言った後、何かに気付いたように男はキョロキョロと室内を見渡す。
「何だよ」
「む、この匂いは焼き魚と出し汁・・・かすかに香る生姜・・・まな板に見える豆腐・・・揚げ出し豆腐だな」
急に目つきの鋭くなった男に、はぁ、とため息を付く。
玄関に出る前に網に乗せた魚と、弱火にしていた出汁に火が通ったんだろう。
換気扇を回し損ねたから、室内に鰹と昆布と醤油の匂いが広がっている。
「・・・」
しゃがんでスリッパを出す。
「?エドワード君?」
「仕事帰りなんだろ?メシ食ってけば?まぁバレンタイン、貰い物はしたしな。そのお返し」
言いおいて自分はサッサとキッチンに引っ込んだ。
「・・・エドワード君・・・!」
嬉々とした様子でロイがパタパタと付いて来た。


「うむ、絶品だ! いつでも嫁に・・・」
「行かねぇよ」
ツッコミを入れても、嬉しそうに夕食を頬張る男に。
(あー、甘いな・・・)
まぁ、多少は世話になってるし、とお茶を淹れるエドワードであった。


******

「ただいまー。ゴメンね、ボクだけ遊びに行っちゃって。ハイ、兄さんお土産」
「いいよいいよ。プレミアチケットだろ。アルが楽しんだらオレは嬉しいし。お土産サンキュー、アル」
しばらくして帰ってきた弟を出迎えて、そんな事を言いながら居間に行く。
「あれ?マスタングさんいらっしゃっい。こんばんは」
まだ居間で寛いでいたロイにアルフォンスが挨拶をする。
「やぁアルフォンス君」
「ちょうどよかった、これマスタングさんにお土産です」
アルフォンスがロイにお菓子の箱を渡す。
「・・・なんでコイツに?」
たまたま会ったから、と言うより、最初から用意していた風のアルフォンスに首を傾げる。
「いや悪いね。ありがとう」
「いえいえマスタングさんに貴重なチケット頂いたおかげで、凄く良い思い出になりました」
ニッコリと言うアルフォンスに。
「アル・・・?」
「いやいや私もエドワード君と過ごせて凄く良い思い出になったよ。ありがとう」
「おい・・・?」
「ではアルフォンス君も帰宅したし私はこれでお暇するよ」
「ちょ」
「そうですか。あ、玄関まで見送りますよ」
そう言ってロイは立ち上がり、アルフォンスに見送られた。


・・・つまりはアルフォンスとロイの共同戦線だったのだ。

「ヤロウっ!」
叫んだが、当の本人は居らず、アルフォンスはそそくさとお風呂へ。

「・・・・・・・・・あー・・・ったく」
しかし、弟には弱く、嬉しそうに食べていたロイに、何だかんだで流されてしまうエドワードであった。

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