ロイの日なんで!SS

ロイの日なんで!SS
執務室の隣の小さな倉庫部屋。
急な案件だとか大量の押収資料があった時などに、一時的書類保管スペースとして使われるらしい。
その部屋で、諸々の当の持ち主のロイと、何故かエドワードは書類とは程遠い荷物を積み上げていた。
「鋼の」
「んだよ」
「鋼の」
ふいに呼んできた声におざなりに返事をすると、再び名を呼ばれた。
「なに」
「鋼の」
「だからなに」
「鋼の」
繰り返される名前に、イライラとしていた気持ちにまたイライラが上乗せされて、一旦荷物整理の動きを止める。
「だからなんだよ・・・・・・っ!」
振り返った瞬間。
「・・・・・・」
思考停止。

目の前に目をつぶった端正な顔。
睫毛が案外長い。
そうではなくて。
この唇にかぶさる柔らかい感触は一体。

数秒固まり、バッと離れる。
「な、な、な」
口元を押さえて、今何が起きたのかを問おうとして音にならない。
「鋼の」
そんな様子を見て、男は何事もなかったかのように、先ほどと同じく銘を呼ぶ。
しかし先ほどとは違う理由で返事など出来ずにいると、男は勝手に喋り始めた。
「今日は私の誕生日でね」
知ってるっつの。この山ほどのプレゼント整理に駆り出されてるっつの。
「私は結構妥協が出来ないんだ」
知ってるし、それがどうした。
「欲しくないものを貰っても困る」
この山ほどの以下略。だったら最初っから愛想ふりまいてんじゃねーよ。
「余り物欲がないんだ」
貰っておいて・・・あぁ不可抗力って事か?手伝わせてる言い訳か?
「だから欲しいものが見つかると我慢出来なくなる」
あぁそうですか。
「だから一番欲しいものが目の前にあったから我慢出来なくなった」
あぁあぁ気に入ったプレゼントでもありましたか?こんだけありゃ一つくらいあるだろうな。
「だから貰った」
あぁ、そう、良かったな・・・って。
何故、また顔が近付いているんだ?
「・・・んぅ?」
再び。

目の前に目をつぶった端正な顔。
睫毛が案外長い。
そうではなくて。
この唇にかぶさる柔らかい感触は一体。

・・・キスだ。

「ん・・・」
唇が離れて、はぁと息をつく。
その唇をぬぐわれ。
「一番欲しいものが目の前にあったから我慢出来なくなった」
同じ事を言われる。
「・・・そうかよ」
一番、欲しい、もの。
「君は君が寄越してくれたプレゼントだろう?私は君が良い」

イライラとしていた彼宛のプレゼント。
でもこの中で一番、ならしい。

「・・・そうかよ」

スルとすり寄ると、一番の宝物だと言うように、強く抱き締められた。



Fin


やっぱり超滑り込みで書いちゃいました!

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