自身の机の背後の大きな窓。
命を狙われやすい身の為、本来は中々許されない大きさの窓だが、景色の良さが気に入って使用し続けている。
窓の外は眩しい位の陽光。
すっかり新緑の季節だ。
そんな爽やかな外の世界と対象的に、春夏秋冬代わり映えの無い執務室で朝から書類と格闘中。
「・・・目が痛い・・・」
大きな窓は気に入っているのだが。
真っ白い書類に陽の光が当たって反射して眩しい。
「仕方ない、カーテンを引くか」
陽を遮ってしまうのは惜しいけれど、と立ち上がった所で。
「よぉ!良い天気だな!」
バタンと勢い良く扉が開いて、太陽のような小さな錬金術師が入ってきた。
「鋼の」
「おう?」
自分を目前にした時は比較的仏頂面の多い子供が上機嫌で。
「珍しく機嫌が良いね」
「珍しくってなんだよ。まぁ天気が良いと気持ちいいよなー」
風もいい具合に吹いていてさ、と執務机近くに歩み寄った。
「?何、カーテン閉めんの?」
「うん?あぁ眩しいからね」
カーテンの端を持ったままのこちらを不思議そうに見て、机上の書類を見て、納得のいった顔をした。
「あー・・・そうだな。ちょっと眩しいかもな」
でも、と続けて。
「この窓気に入ってるから閉めちゃうの勿体ねーなぁ」
ポツリと呟いた。
自身に関して中々好意的な発言をしてくれない彼の、その発言に些か驚いていると。
「んだよ?」
キョトリとされた。
その丸い瞳も太陽のような黄金色で。
「・・・いや」
笑って。
「ではせっかくだから開けたままにしようか。あちらでアイスティーでも飲みながら報告書を読もう」
「アイスティー!」
部屋の中央にあるソファを促して提案すると、気候のせいかアイスティーに喜びいそいそと移動する子供。
それにまた笑い。
内線を掛けて、ピョコピョコと跳ねる三つ編みを追って。
「うわぁ!」
「あぁ、日向の匂いがするな」
後ろから頭を抱えて金髪に顔を寄せた。
「何しやがる!」
「この部屋は窓が開けられなくてね。季節の風をお裾分けして貰おうかな、と」
「暑い!はなせー!」
太陽と緑の匂い。
暴れる身体を押さえ込んでしばしの外の空気を堪能していると、お茶を運んできて呆れた顔をした副官に子供は助けを求めた。
そんな穏やかな、緑色付く季節。
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