赤い実。突発SS。

赤い実。突発SS。
とある昼下がり。
報告の為に小さな錬金術師が執務室を訪れると見慣れないものが机にあった。

「何これ。どーしたの?」
「ん?あぁ先ほど視察の際に頂いてね」
急いでいたから給湯室に寄れずに持ってきてしまった、と言う男。
「へぇ。旨そう」
赤い瑞々しい実は、見ていても鮮やかで手に取りたくなる。
「冷やした方が美味しいらしいよ。冷蔵庫に入れてくるか」
「えー。パパッと冷やしてくれよ」
大気系だろアンタ、と子供が不満そうに口をとがらす。
「必要以上の錬金術は使わない、と君の師匠が言っていたのではなかったかね?」
「まぁそうだけど・・・」
師匠の事には弱いのかアッサリと子供は引き下がった。
「冷えるのを楽しみに待つのも良いじゃないか」
大人が笑いかけると
「じゃ、オレ持ってく!」
子供は簡易パックに入った実を持ち上げた。
「っと、あっ!」
「どうした?っと、」
強度の弱いパックに亀裂が入っていたのか、バラバラと赤い実が散った。
「わりっ」
「いや」
慌てて拾い集める子供に大人もゆったりと近付いて拾い始めた。
「あ、入れ物・・・」
割れた入れ物に手を合わそうとした子供を制して
「まぁ待ちたまえ。良い入れ物があるじゃないか」
「へ?あ」
赤いコートの端を摘んだ。
「ほら持って」
子供がコートの端を両手で摘むと、受け皿のようにコートがたゆんだ。そこへバラバラと大人が集めた実を掬って落とす。
「君の先生が言いたかったのはこういう事じゃないのか?」
「あー・・・」
示されて、子供は少しバツが悪そうに笑った。

「これで全部かな?」
「多分。拾わせて悪い」
「どう致しまして。落とすなよ?」
すっくと立ち上がると、子供は自分の手元を見た。
「どうかしたか?」
ついでにコーヒーを入れていこう、と子供と共に歩を進み始めた大人が問い掛ける。
「いや、昔母さんが畑で取った野菜をこうやってエプロンに乗せていたなーって」
はにかむ子供に
「便利なだけが良いとは限らないな」
思い出も連れてきてくれたようだし、と大人も笑いかける。
「だな」
「それに」
「うん?・・・っ!」
ちゅと軽く啄んだ唇を撫でて
「君のその嬉しそうな顔を見られたのも、キスするのに逃げられないのも、良いね」
ニコリと笑うと、子供はみるみるうちに真っ赤になった。
「テメェっ!何しやがる!」
「ほらほら暴れると落とすぞ?」


ぎゃあぎゃあと賑やかな応酬が起こるのも、手ずからの良さ、か。



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今朝見た夢の一部から通勤中に大豆変換してみましたー(笑)。

と言うか猛烈に頭が痛い・・・。イベント前に風邪だけは勘弁・・・!

新刊終わってないけど、寝たい・・・。

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