七夕SS。

七夕SS。
「鋼の?」
「へ?げっ大佐」

セントラルから西に少し出た小さな街。
特に観光名所も何もない街の小さな古書店で出会った。
多忙な男と旅暮らしの少年の珍しい偶然。

「君、こんな所で何をしているんだ?弟はどうした?」
「そっちこそ。まさかこんな所までサボり?」
しかし男は今日は軍服ではなく私服であった。
「そんな訳ないだろう。上の御仁から届け物を頼まれてね。今から帰る所だ」
まったく郵便を使えば済む話なのに、嫌がらせも良いところだ、とため息混じりに言う男。
「・・・今からって列車もう無いぜ?」
そんな男に何言ってんだ?と返す少年。
「まだ19時だろう?西からセントラルに来る最終はもっと遅かったと記憶しているが?」
ここからセントラルまでは列車で一時間と言った所だ。逆算すれば間に合う時間の筈だと言うと。
「田舎ナメんなよ?この時間になると主要駅以外は通過すんだよ」
つまりはセントラルのような大きな駅は停まるが乗降客が居なさそうな駅は通過なのだ。
「まぁ気の良い車掌だったら駅に立ってりゃ気付いて止まってくれるかもな」
「な」
呆然とする男に、オレもアルと合流したいのに足止め食ってるトコ、と本を掲げた。
「・・・今日は泊まりか・・・。せっかく明日は非番なのに目的も大した持ち物も無いまま・・・それも嫌がらせか?」
「かもな。あんま宿無さそうだから頑張れよ」
ブツブツ言うロイにエドワードはじゃ、とそろそろ閉店したさそうな古書店を出ようとした。
「待ちたまえ」
「んだよ」
追いかけて来たロイにエドワードは面倒そうに振り返る。
「せっかくだから夕食を一緒にしないか」
「あ?アンタオレの話聞いてたか?宿先に探した方がいーぜ?」
基本的に観光客来ないんだからさー、と言うと
「ちょうど良い。君の泊まるホテルに案内したまえ。それから夕食に行こうじゃないか」
ニコリと笑う男に冗談!と逃げを打つが、こういう時だけ無駄に素早い男は少年を拘束した。

「え?部屋が無い?」
揉めながら着いた宿で。
「普段は空室の方が多い位なんですが、今日はたまたま学校の発表会がありまして。各地から先生方がいらっしゃっているんです。この土地は中心から離れているので星が見やすく今夜は観測会が行われるんですよ」
申し訳なさそうにするホテルマン。
「他にホテルは?」
「生憎小さい街なもので・・・ここだけなんです」
「はははっ」
愕然とするロイにエドワードは笑った。ら、大人気ない大人にギロリと睨まれた。
「・・・ったくしょうがねぇな。おっちゃん、オレの部屋ツインだろ?」
「はい。学会の先生方でシングルが埋まっていましたから先程いらして頂いた際にご説明させて頂いたように最後のツイン部屋にて手配させて頂いております」
「仕方ねーからこのオッサン、オレの部屋に追加して」
「え?」
「かしこまりました。ではこちらの宿泊帳にサインを」
「あ、あぁ」
エドワードが苦笑して言うとホテルマンは台帳を差しだしてきた。


「おら飯行くぞ。アンタのおごりだからな」
さっさと歩き出すエドワードにまたもロイが追いかけて。
「・・・珍しい事もあるもんだな。雨が降るかな?」
「野宿させっぞ無能」
ロイが驚いたように言うのにエドワードが眉間に皺を寄せた。
「いや。助かったよ、ありがとう」
「・・・まぁ一年に一回位はな」
お礼を告げる男に少年はクイと空を促した。
「あぁ・・・なるほど」
「それにオレは根っから優しいんでー、雨なんて降りません〜」
暗に奇行じゃないと告げる少年に。
「そうだな。知っているよ」
素早く抱き寄せて耳元で囁く男。
「うわぁっ!」
ビクリと震える少年に大人は笑んで
「雨が降ったらマズいからいつも通りの事をしただけじゃないか」
ますます腕に力を入れた。
「寄るな変態!」
「酷いな」
「オレもいつも通りの素直な感想が出ただけだっての!」


人の居ない静かな路地に賑やかな声が響いて。
頭上にはそれを見守るように、満天の星が輝いていた。


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ギリギリ七夕小噺。

・・・あぁ色々終わってない・・・けど眠い・・・。

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