暑いよ、なSS。←え?

暑いよ、なSS。←え?
※未来捏造です。


コンコン、とノックの音が響いた。
「入れ」
「エルリック少佐入ります」
カチャリ、と昔からは想像出来ない程静かな仕草で金髪の青年・・・まだ少年の容姿と呼べる彼が入室してきた。

「市内視察終わりました」
「ご苦労。何か変化はあったかね?」
「サウスコートですが、道の整備を早く進めた方が良いですね。崩れた部分が広がっていますし立ち入り禁止のロープは張っていますが、夏休みが始まると子供が遊びで入ってしまう恐れがあります」
淀みなく報告する様に、少し悪戯心が沸く。
「そうだな。さすがヤンチャな子供の心理に長けている」
「ついでにサボリ癖のある准将サマの逃走ルートになりかねない、とホークアイ大尉が」
サラリと返され。
「・・・」
「・・・」
こちらの挑発にしれっと返す辺り成長したのだろうか。
「・・・息抜きと呼んでほしいなぁ」
「テメェは息抜きばっかだろーが。探すこっちの身にもなりやがれ」
ふぅと溜め息を着くと、彼が嫌そうに言った。
「いつもいつもどうして君には捕まってしまうのだろうね」
発見するのは以前はハボックだったが現在はエドワードだ。しかもハボックより数倍早い。
「アンタが言う所のヤンチャな子供の心理なんじゃねぇ?」
「汚れた軍部に置いて少年の心を忘れないなんて素晴らしいじゃ・・・」
つまりはテメェも子供って事だろ、とニヤリと言うのに反論しかけて。
「鋼の?君なんだか顔が赤くないか?」
「へ?あー・・・暑かったからかな・・・?」
オレ汗かかない体質だから熱が籠もるんだよな、と自分の顔を撫でた。確かに組み手をして運動した後も汗をかいていた印象がない。
自分は冷え性なので夏も余り汗はかかないが、彼みたいなタイプは炎天下に1日居たら相当のぼせているんではなかろうか。
白い頬が紅潮しているのに、思わず手のひらで撫でた。
「熱いぞ?」
「何かアンタの手冷たくてきもちいー・・・」
嫌がるかと思いきやヘラリと笑って。
グラリ。
「っ鋼の!」
そのままフーっと後ろに倒れる身体を慌てて受け止めた。


「しばらく涼しくして寝かせてやれ」
「ありがとう」
執務室に呼んだ軍医を見送って、エドワードを寝かせたソファに戻る。
濡れたタオルを額に乗せなおしてやると、睫毛が震えて金瞳が現れた。
「気が付いたか?」
「・・・オレ?」
イマイチ状況が把握出来ていない彼に手短に現状を教えてやった。
「あー・・・情けねぇ・・・」
クッタリとした体でエドワードが呟くのに苦笑して。
「今日は炎天下だったから仕方あるまいよ。しかし君、こんな夏日になぜ厚手のタートルネックインナーを着ているんだ」
先ほど軍医に診てもらう際に脱がした上着の下。半袖ではあるが夏に黒のタートルは暑いだろう。加えて上着付きで1日外で視察だ。
問い掛けるとエドワードは若干言いづらそうな表情を見せてから、小さく呟いた。
「あー・・・・・・・・・・・・から」
「ん?」
聞こえずに耳を寄せると、少し拗ねたような顔をして
「・・・・・・着膨れてると体格良く見えるから」
口を尖らせて言った。
「君ね・・・」
彼が身体にコンプレックスを持っている事は承知だが、臨機応変に適宜対応と言う言葉もあるだろう、と呆れた。
「うるせぇなぁっ」
本人もバツが悪いのか、熱中症と別の意味で顔を赤くした。
「・・・シャツを貸すから着替えなさい。そのままだと首が窮屈だろう」
「え?いーって!」
「良いから」
慌てて起きあがるのを制し、執務室のロッカーを漁ってシャツを放り投げた。
「飲み物を取ってこよう。その間に着替えてろ」
「え、ちょ准将」
何か言いかけた彼を置いて執務室を出た。


「着替えたか?」
「うん。ワリィ」
冷たいアイスティーを持って戻ると、エドワードが横になったまま振り返った。
「アイスティーを持って来・・・」
その姿は、サイズが合わずダボダボのシャツに、着替えに邪魔だったのかポニーテールにしていた金髪を解いていた。
白い肌が頬だけ紅潮して、少し気怠げな金の瞳がこちらを見上げて。
「・・・」
「准将?」
キョトリとした彼に内心焦ってグラスを差し出した。
「あ、ゴメン、サンキュ」
喉が渇いていたのか、こちらの挙動不審さには気付かず、コクリと一口二口アイスティーを嚥下した。
動く喉元に、濡れた唇。
一心地ついたのか、ほぅと吐き出される熱い息。
思わず凝視してしまった。
「准将?」
今度は不思議に思ったのか覗き込んで来た金瞳に。
近い顔に。
「っ!」
「?何かアンタも顔赤くないか?」
胡乱気に更に寄って来た顔に。首もとから覗く鎖骨に。
「何でもないっ」
慌てて目を逸らした。
「本当かよ?」
「本当だ!」
「えー?怪しいな」
「怪しくない!だから近寄るな!」


---何だか気付いてはいけない感情に気付いてしまったかもしれない。

いや暑さのせいだ!

と、諦め悪く足掻くロイであった。



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暑いよー○| ̄|_なSS。
暑いの苦手・・・。


Kさま!
拍手コメントありがとうございましたーー!
頂けると思っていなかったので解析画面の前で挙動不審人物になってました(笑)。
また改めてお伺いします〜(>_<)

他にも、無言パチ下さる方もありがとうございます! 拍手やコメント頂けると励みになります(^^)

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