日食(SS)。

日食(SS)。
定期報告の為に(仕方がないから)電話をしたら。
「やぁ、今何処にいるかね?南部?丁度良い、そこで待機だ」
などと一方的に告げられて切られた電話。

「・・・なんだ?」

首を傾げたまま、迎えた翌朝。
「んなっ!」
「やぁ」
宿に何故か私服の見知った上官が現れて。
「なんでアンタがここに居んだよ?!」
「待機だと言ったろう?」
「答えになってねー!」
「む、もうこんな時間か。行くぞ」
「はぁ?!」
訳も分からず弟共々(借りたらしい)車に乗せられた。


行き着いた見晴らしの良い湖畔。
良くわからないままながら順応性の高い弟は「飲み物買ってきまーす」と楽しげに売店へ旅立って行った。

「・・・おい」
「うん?」
「うん?じゃねーよ。何だよ一体」
「君新聞は見ていないのか?」
「見てるけど何だよ?別にこれといった事件も無いだろ?」
新聞に載らないような事件は知らねぇけど、と言うと
「君はロマンが無いなぁ」
のんびりとそんな事を言われた。
「生憎科学者なもので」
「科学者にとっても興味深いと思うよ」
フンと鼻を鳴らすと男は悠然と空を指差した。
「・・・・・・・・・あ」
「分かったかね?」

今日は46年振りの皆既日食だ。

「46年振りなんて。君も初めてで私も初めて見る。一緒に『初めて』を体験出来るなんて。そんな日には一緒にいたいじゃないか」
ゆったりと微笑む男。
そんな事のためにわざわざこんな所まで来たのか。

嬉しさ半分、恥ずかしさ半分。

「・・・しょーがねぇから一緒に付き合ってやる」

黙って腕に抱きついたら、男が嬉しそうに笑った。



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天文スキー(←午前3時の怪あとがきより)、日食に乗っかってみました(笑)。
朝の電車内で打ってたら具合悪くなったんで(アホ)また微調整は後ほど○| ̄|_


しかし本日雨なんですが!見られないんだろうか(T-T)

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